染まってないからこそ、新たな風を吹き込める。
「TTe」が考えるe-Sportsのある世界
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リアルをコアに最適なブランド体験をデザインする会社、体験デザインプロダクションTOWは、今年e-Sports領域における専門チーム「TOW×T2 Creative e-Sports Unit TTe(ティー・ティー・イー)(以下TTe)」を設立しました。
e-Sports元年と呼ばれた2018年以降、領域の市場環境の伸長が顕著になってきており、TOWとしても近年、世界的有名ゲームの大会を初めとした大規模なe-Sportsイベントで高い実績を上げてきました。
今回は、そんなTTeで活躍するメンバー4人が、それぞれの役割やe-Sportsにおける潮流、今後の意気込み等を語り合いました。
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いい意味で染まっていない。だからこそ新しい風を吹き込める
まずは今回新しく設立したTOWグループ内でのTTeの役割について教えてください。
川嶋:TTeというのは簡単に言うとe-Sportsをつくるにあたって必要な職種の人が集まった専門組織で、ユニットです。
e-Sportsイベントは、発表会や街頭サンプリングと同じように、今後僕らが取り組んでいく仕事の領域の一つになるので、それをTOW全社で推進していくためのエンジンがTTeの位置づけになります。
なぜそういう専門組織をTOWグループがつくったかというと、やっぱり時代の流れの中でそういうイベントをやってくださいというオーダーがこの2年くらい増えていることが一つ。
さらに、TOWが持っている人材だったり能力だったりとの相性がすごくいいことを実感したからです。でも、それぞれ現場を担当している皆さんとしては、実際どうですか?もともと40年イベントやってるTOWがe-Sportsやるのって相性いいと僕は思ってるんですけど。
村山:うん、やってきたこととの親和性は非常にあると思う。
e-Sportsには、TOWがやってきたイベントやプロモーション、キャンペーン、運営的なことも、事務局的な機能も、いろんな知見がe-Sportsという一つのイベントの中に要素として必要になってくるから、やってみるとできちゃったみたいな感じはあるよね。
川嶋:そうですね。例えば、発表会でのステージ演出のノウハウだったり、企業のインナーイベントでの人を動かすロジティクスだったり。そういう僕らがやってきたことを活かせるのがe-Sportsイベントだと思う。
しかも、e-Sportsイベントには絶対マストになる“配信”業務は、ここ2年くらいうちが強くなってきたところだから、新しく獲得した能力と、古くから培ってきているイベントのノウハウが余さず投入できるのがe-Sportsイベントだったという感じかな。
近藤: e-Sportsって専門会社だったり、ゲームが好きな人が始めて作り上げてきた業界なので、やっぱりすごく専門性の高い業界だし、他ジャンルのイベントと一線を画す独特の物があると思う。もちろんそういった独特のカルチャーは大事にしながらだけど、いい意味で染まっていない、e-Sports以外のプロモーションやイベントをしていたTOWが入ることで、全く新しい視点を加えて、新しい風を吹き込めるんじゃないかなって思ってます。
川嶋:それはすごくあると思う。このTTeのメンバーはもちろんゲームに強いんだけど、ゲーム以外の商材のプロモーションも手掛けていて、その手法を転用できる発想を持てるのはTTeの強みだよね。
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配信を通して同じ体験をさせられるとしたら、100人が100万人になる。
村山:イベントプロデューサーでいうと、まず一つのe-Sportsイベントが決まったところから、最終的に成功するところまでを全体推進して、取りまとめるのがイベントプロデューサーの仕事。あとはなるべく、あるべき姿にみんなを導くというのが、重要な役割だと思う。
川嶋:例えば運営のディレクターだったり、イベントの演出系のテクニカルの会社だったり、パートナー企業でいうと配信の会社、ゲーム運営の会社、番組作りの会社とかいろんな会社をイベントプロデューサーが中心になってチームを組み上げていく。
全ての真ん中にいるのがイベントプロデューサーだと思う。
村山:あと大事なのはどいういう大会にするのか、という方向性を決めることだね。
川嶋:それによってスタッフィングも変わりますしね。
村山:うん。大きな演出の方向性だったり。そこはそれぞれの演出家、テクニカルの人間と話し合いながらある程度プロデューサーがつけた道に対して肉付けしてもらって。プロデューサーがその道しるべになるべきかなと思ってる。
松井:映像プロデューサーでいうとe-Sportsは配信がマストになってくるので、その配信映像を統括するというのが大枠の仕事です。
通常のCM制作と違って、配信専門の会社や、CGをつくる部署、他にも流し込むクリエイティブを作る制作会社と協業することになるので、各々が勝手にやってくと絶対にうまくいかない。なので、それを一つにまとめるのが、映像プロデューサーの大きな役割かなと思います。
その上で配信を見る視聴者はどういった演出をしたり、どういった部分を切り取ったら盛り上がるのかを演出ディレクターと相談したり、さらにはクライアントがどういったものを見せたいのか、っていうのも叶えるために他の会社の方と連携しなきゃいけないし。
イベントプロデューサーがイベントの中心にいるとしたら、映像プロデューサーはアウトプットするものの中心の一つになるのかな、と思います。
川嶋:そうだね。e-Sportsイベントの配信って、ゲームやカメラの映像をそのまま生中継するのがベースなんだけど、その中に選手紹介や、ハイライトみたいな編集された映像があって。エディットされた映像の見せ方が重要になる。その時に単純に、生の映像だけをそのまま伝えていればいいというものではないので、そこにやっぱり映像プロデューサーが必要になってくる。エディットされたものとライブをどう組み合わせていくかとか、会場の熱気をどう画面の中に収めていくか、イベント当日までの背景やドラマをどう収めていくか、っていうのを総括していくのが映像プロデューサーが持っている役割かな。
松井:あとイベント演出用の映像を事前につくっておくっていう作業があったりもしますね。
川嶋:始まる前に流すものもそうだし、ステージ幕間演出映像とかもそうだね。
やっぱりイベントになると、会場にはキャパシティがあるから、100人の会場だったら100人しか体験できない。でも、極論配信を通して同じ体験をさせられるとしたら、100人が100万人になる。だから配信ってすごく重要。
会場にいる人たちの体験と、配信を見ている人の体験両方の質をどうやって上げていくか、というところがイベント配信の大きなテーマなので、映像プロデューサーが担ってる役割は大きなものがある。
一方では、その配信映像は被写体あってこそなので、その被写体を担っているのが演出家だね。
近藤:e-Sportsの仕事って配信ファースト、ゲームファーストみたいな感じで、今まではそういうものが多かったと思っていて、それをどれだけイベント会場にいる人たちに対して良く見せるかを整えていくのが演出家の仕事だったんですよね。
でも、配信ではすごく素敵なものも、実はイベントにしてみたらカッコ悪くなったりして。それをどっちも良く見えるように整えていくのが演出家の仕事です。
この場にはいないけど、T2にテクニカルディレクターって役割がいるんです。簡単にいうと技術調整。映像の技術とイベントの技術って、用語とか世界が違っていて、そいういうところの調整をしてくれるのがテクニカルディレクターですね。
川嶋:さらに言うと、配信も演出もそのチームを支えているのがテクニカルディレクターで、映像とイベントという本来違う世界だったものの技術的な繋ぎこみをやるっていうのもそうだし、何よりも一番は“ゲーム”っていうまた違う世界の技術的なバックグラウンドを持つ商材との繋ぎこみを行うのも彼らが担っていく。言わば、スポーツイベントのインフラづくりをする人たちかな。
役割でいうと、映像プロデューサーと演出家がどのくらいシナジーを生んでいけるかが結構キーポイントになっていて、ここがユニット内で連携しているっていうのは大きいと思う。
やっぱりこの4職種がイベントプロデューサーを中心に、ユニット内(TOWグループ内)にいるのが、うちがe-Sportsイベントをユニットとしてやっていく一番大きな意義なのかなと。
近藤:それぞれの職種や役割を他社で組み立てることもあるんだけど、他社だとやっぱり距離を取るシーンがあったりするので、グループ内でできるのはそこをいい具合に調合しながらやっていけるからやりすくていいかな。
村山:諦めることもあるしね。お互いの領域を守るためにできるできないって。
川嶋:そう。それぞれがそれぞれの会社間でぶつかったりもするし、本当は突き詰めて登り切っていかなくちゃいけない質の部分を諦めたりするし。それは利害関係とかもあると思うけど。
逆にTOWはグループ内にいるので、むしろ近藤さんって演出家をやっている人が配信上のことに口を出したり、それぞれ4職種が越境しながらやっていける、っていうことが外じゃなくて中にワンテーブルでいるところの強み。単純に連携をしているだけじゃなくて。
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ゲーム好きがYouTuberみたいな憧れの職業になる。
現在のe-Sports市場の動きや今後について聞かせてください。
村山:去年(2018年)e-Sportsの日本市場の金額が約50億になって、それが2022年には100億近くまで跳ね上がることが数値として出てるんだよね。
でも、世界はもっとすごくて、特に中国・韓国・アメリカとはまだまだ差があるんだけど、だんだん経産省とか、法律改正でe-Sportsをバックアップして推進する動きが出始めていて、日本の市場もどんどん広がっていくと思う。
ただその市場金額の半分以上はスポンサー広告っていうのが現状。要はゲーム以外の企業と仕事の接点持ってやってるTOWや広告代理店が、e-Sportsに非常に近いということ。スポンサーに対して新しい提案領域になるし、今まで獲得しづらかった若い子たちに対してのプロモーションとしての投資場所になりつつある。
だからこそ、スポンサーのためにっていう発想を装置として考える必要もあると思っていて。そういうプロモーション視点のことはTOWにしかできないんじゃないかな。
村山:例えば、フォートナイトで16歳が3億円賞金で手に入れたじゃん。高校生が数億円っていう金額をもらえるような大会は、日本ではまだ開かれていない。だけど、海外では賞金だけで数十億っていうものがすごくたくさんある。
一時期YouTuberが憧れの職業と言われたみたいに、e-Sports市場がしっかりできて、いろんな人たちから認められると、ゲームのプロになりたいって子たちが増えてくるだろうし、今までゲーム好きだった人たちがe-Sports大会を支えていく中で、それがちゃんとした職業になってくると思う。
そんな中でいうと、僕が携わったステージゼロっていう高校生のe-Sports大会は、世界で活躍するプレイヤーを輩出したいっていう思いから立ち上がったんだよね。彼ら(ステージゼロ)の実施の根底にあったのが、日本にe-Sportsって文化を根付かせること。そいうのを見ると、みんなで一緒にe-Sports文化を根付かせようとしてることを実感する。
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その場で真剣に戦う、そのために日々練習するっていうのはその他の競技と変わらない。
e-Sportsの盛り上がりを踏まえ、TTeとしての意気込みを教えてください。
川嶋:僕は、2018年にグランツリーリスモの世界大会を担当したんだけど、実はゲームユーザーじゃなかったんですよね。そのゲームのファンじゃなかった。でも本番何日かやって、やりきったときにファンになってたんですよね。選手のファンにもなってたし、競技のファンにもなってた。なんかe-Sportsって今更だけど、ゲームタイトルで争うスポーツなんですよね。ゲームはゲームなんだけど、やっぱりサッカーとか野球と本質的には変わらないと思う。
サッカーをやったことがなくても、好きなサッカーチームのサポーターになってる人って絶対いるじゃないですか。そういう風に、ゲーマー以外の人たちにこのすばらしいe-Sportsっていう競技の魅力を伝えていけるイベントだったり、配信だったりをつくっていくってことに、僕らは意気込みを持ちたいと思ってる。
村山:そうだね。その場で真剣に戦う、そのために日々練習するっていうのはその他の競技と変わらない。それに対して一生懸命やってる人たちを僕らがサポートしてあげて、それでどんどんe-Sportsっていう文化が根付いていくような一つのきっかけになるイベントをつくりたいし、そういうのが当たり前になっていけばいいなと思う。
川嶋:それによってたぶん、このe-Sportsっていう文化が広がっていくと、ビジネス的には新しい市場ができるだろうし、新しい選手がヒーローになることもあるだろうし、日本はまだ市場が大きくないけど、e-Sportsっていうムーブメントを使って、日本企業のサポートをしたり、日本人も海外の人も一緒に盛り上げていけるような、そういうのに一役買えるイベントをつくっていくのがやりたいことなのかもしれない。
松井:まだ開発されていないところとして、海外も日本の市場に注目してますしね。
川嶋:そこで僕らが提供できるのって、40年間日本で商売のお手伝いをしてるから、海外向けにはそういう日本人の感性にあった番組づくり、イベントづくりも手伝っていけるんじゃないかなと思っています。
村山:でも本当、真剣に高校生が大きなステージ上で戦って喜んで泣いて。それに感動したよね。日本って未だにちょっと、ゲームをやる人、ゲーム自体にネガティブなイメージがあって、そこをポジティブな感じにしていけるものができたらいいなとは思いますね。
参加する選手たちが憧れる舞台をイベントとして作れるからそれはすごくやりがいがあるし楽しい。
なんだろう…やってて思ったんだけどe-Sports大会って、企業の利益を上げる視点とはちょっと違うよね?イベントなんだけど大会運営だし。
近藤:昔デパートでやってたゲーム大会って呼ばれるものがe-Sportsに発展していて、アプローチの仕方というか、考え方が変わった気がしますね。昔はゲーム大会っていうプロモーションの一つとしてゲームを売るためにやってたし、今も根っこはそうだけど、日本として新しい文化を作ろうってのがいろんなところからありますよね。
川嶋:そうだね。本当にやってて思うのが、93年にJリーグが立ち上がってマスカルチャーになっていくっていうのを結構e-Sportsで追体験してるというか、一つのスポーツカルチャーが確立されていくのを体験している感じがする。
村山:いつかあれだよね、近い将来だと思うけど、スタジアムが埋まるくらいのe-Sports大会にはかかわりたいよね。