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2026.11.02

【リアルエンタメユニット INSIGHT】 街は、「場所」から「体験」へ。 ― 東急不動産と考える、エンタメで街の価値をつくる方法

東急不動産株式会社 都市事業ユニット 渋谷事業本部 タウンマネジメント部 コンテンツ投資企画グループ グループリーダー / 伴将晃

株式会社テー・オー・ダブリュー 統括執行役員 第三本部長 兼 リアルエンタメユニット担当 / 竹下弘基

株式会社テー・オー・ダブリュー パブリックアカウント室長 兼 リアルエンタメユニット 都市・商業施設チームリーダー / 北川和也

  • #IP・コンテンツ
  • #リアルエンタメ
  • #体験デザイン
  • #都市・まちづくり

商業施設に人を集めるには、何が必要なのか。

魅力的なショップを揃えること。アクセスを良くすること。もちろん、どれも大切です。しかし今、都市や商業施設に求められる役割そのものが変わり始めています。

「買い物をする場所」から、「そこでしかできない体験がある場所」へ。

TOWでは今回、「リアルエンタメユニット トークイベント『都市・商業施設篇』」を開催しました。本企画は、リアルエンターテインメントをテーマごとに掘り下げ、現場の知見や可能性を共有するトークイベントの第4回です。

ゲストに迎えたのは、渋谷・原宿を中心に、エンターテインメントやIPを活用した街づくりを進める東急不動産の伴さん。

東急グループは、渋谷駅を中心とした約2.5km圏を「広域渋谷圏」と位置づけ、東急不動産は不動産の開発・運営だけでなく、エンターテインメント事業やコンテンツへの投資、IPを活用した体験づくりにも取り組んでいます。

今回は伴さんとTOWの竹下、北川が、商業施設の変化からIP・エンタメへの投資、街全体を使った体験、さらにコンテンツを自ら育てていく可能性まで、「これからの都市・商業施設に求められる体験」について考えました。

PROFILE
伴将晃
東急不動産株式会社 都市事業ユニット 渋谷事業本部 タウンマネジメント部 コンテンツ投資企画グループ グループリーダー
竹下弘基
株式会社テー・オー・ダブリュー 統括執行役員 第三本部長 兼 リアルエンタメユニット担当
北川和也
株式会社テー・オー・ダブリュー パブリックアカウント室長 兼 リアルエンタメユニット 都市・商業施設チームリーダー

商業施設は、「買う場所」から「体験する場所」へ。

オンラインでも商品が買える時代に、わざわざ街へ行き、商業施設を訪れる理由は何なのか。東急不動産が一つの答えとして考えているのが、「体験」です。

コロナ禍を経てECの普及などで商業施設を取り巻く環境が変化する中、イベントやIP体験が増え、それが好評を博し暫定利用から常設のイベントスペースへと変わってきました。

原宿の「ハラカド」にも、IPやエンターテインメントを展開できるイベントスペース「MAZE」を整備。さらに東急プラザ渋谷でも、物販を中心とした施設から、エンターテインメント体験を呼び込む施設への転換が構想されています。

伴「一義的には、“人を呼ぶ施設としてのコンセプトを強める”ことが大きいです。コロナ後は体験への渇望が広がり、イベントやIP体験が増え、それらが好評を博したことで、暫定利用から常設のイベントスペースへと変わってきています。」

「何を買えるか」だけではなく、「そこで何を体験できるか」。北川も、こうした変化について「商業施設自体の価値が、商品やテナントだけではなく、“そこへ行く理由となる体験”へ広がっている」と捉えます。

商業施設の価値を決めるものが、少しずつ変わり始めています。

「場所を貸す」から、コンテンツを一緒につくる側へ。

さらに興味深いのが、不動産会社とエンターテインメントの関係です。

東急不動産がハードとソフト一体の街づくりを考える上で、キーワードにしているのが「創造・発信・集積」の循環。

渋谷・原宿が常に人を集め、新しいトレンドや文化が生まれる街であり続けるためには、最先端のエンターテインメントや体験が存在し、それが次の人や企業を呼び込んでいく必要があります。

伴「不動産会社が場所を貸すだけでは、その循環は限定的です。だから我々自身が事業に投資し、施設や街の文脈に沿うタイムリーで熱量のあるIP体験を街に実装する。それが今取り組んでいることです。」

従来のリーシングでは、イベント側が「どこでやるか」を考える段階で会場を提案することが中心でした。

しかし現在は、さらに上流の企画段階からコンテンツ開発に入り、一緒につくり上げていく。その結果、場所の使い方そのものも変わってきています。

竹下も、原宿の施設開発に関わった際、K-POPカルチャーを中心に発信する常設拠点を提案。単発イベントではなく、「この場所にどんなカルチャーや体験を根付かせるか」という視点から企画を考えていました。

竹下「イベントを一回実施するというより、その場所にどんな体験があると面白いのか。施設の価値そのものから考えることが、僕らにとっても重要になってきていると思います。」

施設というハードが完成してからソフトを入れるのではなく、どんな体験をつくるかという視点から、場所のあり方まで考えていく。都市・商業施設とエンターテインメントの関係は、より深いものになり始めています。

人気IPだから、人が来るとは限らない。

一方で、IPを呼べば必ず人が集まるわけではありません。

東急不動産ではこれまで、ゲーム、アート、アーティスト、K-POPなど、さまざまなIPを活用した体験に取り組んできました。

その中には、大型IPでありながら、想定した集客に届かなかったケースもあります。作品の公開タイミングとイベント開催時期の距離、体験への参加障壁、プロモーションの方法など、リアルイベントではIPの知名度以外にも多くの要素が集客を左右します。

また、SNS上に多くのファンが存在していても、その人数がそのまま有料イベントへの来場者数になるわけではありません。

伴「SNS上のフォロワー数と、実際に有料イベントへ足を運ぶファンの数は同じではない。その中で、来場や満足度を高めるIPや体験づくりについては、我々も試行錯誤しています。」

一方、アーティストのVRライブイベントでは、目の前にメンバーがいるかのような体験に、手を伸ばしたり、涙を流したりする参加者もいたといいます。

ここから見えてくるのは、IPの「知名度」だけではなく、そのIPだからこそ、リアルな場所で何を体験できるのかという視点です。

北川は、この点をTOWの仕事にも重ねます。

北川「IPが強いから人が来る、という単純な話ではないんですよね。そのファンが“わざわざそこへ行きたい”と思える体験になっているか。僕らが企画する上でも、そこはすごく重要だと思います。」

一つのイベントから、街全体の体験へ。

リアルイベントが持つ価値は、会場に来た人数だけでは測れません。

一つのIPやコンテンツをきっかけに人が集まり、その熱量が施設内の飲食店やショップ、さらには周辺の街へと広がっていく。東急不動産では、イベントを単体で捉えるのではなく、こうした「体験の波及」まで含めて街の価値につなげていくことを重視しています。

伴「不動産会社としては、一つの施設でイベントを終わらせず、街に波及させたいと思っています。テナントとのコラボだけではなく、もっと文化祭のように、渋谷や原宿を面的に、ショーケースとして楽しめる体験にしていきたいですね。」

例えば、イベントに合わせて施設内の飲食店やショップが特別なメニューや装飾を展開したり、サイネージや広告を連動させたり、体験そのものを他の施設に拡張したりしたい。

イベント会場の中だけではなく、訪れた人が施設を巡り、さらに街を歩く時間まで含めて体験を設計することで、一つのコンテンツが街全体を楽しむきっかけになります。

北川も、こうした「街ぐるみ」の体験設計には大きな可能性があると考えます。

北川「僕らも企画の中で“街ぐるみ”や“回遊性”という提案はよくします。ただ、実際には施設をまたいだ瞬間に難しくなることも多い。デベロッパーと一緒に街全体を一つの体験として考えられるようになると、企画の可能性はかなり広がると思います。」

イベント会場、レストラン、ショップ、サイネージ、広場、そして街を歩く時間。

それぞれを個別の「場所」として見るのではなく、一つの体験としてつなげていく。

「イベントをどこでやるか」から、「街全体をどう使って体験をつくるか」へ。

都市・商業施設を舞台にしたリアルエンタメだからこそできる、新しい体験設計がそこにはあります。

渋谷を、コンテンツ体験の「発射台」にする。

さらに東急不動産が描いているのが、渋谷・原宿を起点に、そこで生まれた体験を国内、そして海外へ広げていく構想です。

渋谷・原宿は、多くの人が集まるだけでなく、そこで起きていることがSNSなどを通じて外へ広がりやすい街でもあります。

伴「渋谷・原宿は発信力が強く、全国巡業する体験のスタート地点になれる街だと思っています。渋谷をコンテンツ体験の発射台にして、国内巡業、さらに海外へ展開する立場に入り込みたい。」

その一例が、北斎をテーマにしたイマーシブな展示です。

日本が誇る文化資源を最新技術で再構築し、世界中の人たちに体験してもらうコンテンツを創生する事業「ANOTHER STORY PROJECT」を立ち上げ、第1弾として2025年2月1日から、東急プラザ渋谷にて『HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO』を開催。好評につき、期間を延長し、8月11日まで開催した。

映像制作会社などと制作委員会を組み、東急不動産自身も権利を持つ形で事業に参画。日本で生まれた体験を海外へ展開していく動きにつながっています。

これは、施設にコンテンツを「呼ぶ」だけではなく、街からコンテンツを「生み出し、育てる」という考え方でもあります。

北川「TOWの企画も、一度実施して終わるのではなく、体験自体をIPとして育てて、別の都市や海外まで展開できる可能性がある。そう考えると、僕らの仕事のつくり方も変わってきそうです。」

IPを「呼ぶ」から、街で「育てる」へ。

では、これからどんなIPを街に呼び込んでいくのか。

伴さんから出てきたのは、特定のIPの名前ではなく、「既存IPに頼らず、ゼロからIPをつくる」という構想でした。

クリエイターがアイデアを生み出し、プロモーターが体験へと仕立て、場所を持つデベロッパーがその実験と成長を支える。

まず渋谷で実施し、そこで得た反応をもとにコンテンツを磨き、国内、そして海外へ展開する。

大規模なコンテンツだけではなく、小さく始め、街を使いながら育てていくことも想定されています。

伴「皆さんとIPを共同所有して、街で育てる。その中で我々は場所や事業面を支える。TOWさんとも十分に組める領域だと思っています。」

竹下も、こうした動きには、これまでTOWが培ってきた体験づくりの力をさらに広げる可能性があると考えます。

これまでは企業やブランドの課題に対して体験を企画することが中心でしたが、その体験そのものを一つのコンテンツとして育てていく。

そして、デベロッパーと組むことで、「まず街でやってみる」という実験の場まで持つことができる。

竹下「施設という“点”だけではなく、街全体を体験のフィールドとして捉えられると、イベント、飲食、買い物、移動まで含めて設計できる。リアルエンタメとしても、できることはかなり広がると思います。」

「場所」ではなく、「体験」から街を考える。

今回のトークから見えてきたのは、商業施設や街を考えるスタート地点そのものの変化でした。

「このスペースで何をやるか」から、「どんな体験をつくりたいか。そのために、この街をどう使うか」へ。

施設、店舗、サイネージ、広場、そして街を歩く時間まで一つにつなぎ合わせれば、街そのものを大きな「体験のフィールド」として捉えることができます。

さらに、そこで生まれた体験を一度きりで終わらせず、コンテンツとして育て、別の都市や海外へ広げていく。

施設という「点」から、街という「面」へ。

イベントという「一回の体験」から、育ち続ける「コンテンツ」へ。

デベロッパーが持つ「場所」と、TOWが培ってきた「体験をつくる力」。

その二つが企画の上流から組み合わさることで、都市・商業施設におけるリアルエンタメの可能性は、さらに広がっていきそうです。

※2026年11月時点の情報です。
Photo:山村優人
Text:村松亮

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