体験デザインとは、人の行動プロセスを設計すること―体験デザイン本部 体験CD 橋本弘平
体験デザイン本部 企画室 橋本チーム チームリーダー 体験CD / 橋本弘平
TOWが大切にしてきた体験デザインという考え方。さらには、プロモーション領域とリアルエンタメ領域を横断するエクスペリエンス・パートナー。この二つのワードの意味と価値を、TOW唯一の体験CDに聞いた。
橋本チーム チームリーダー
体験CD
体験を起点にクライアントの課題解決に向き合い、「人の行動プロセスを設計すること」を体験デザインと捉える。生活者視点を重視しながら、プロモーションとリアルエンタメを横断する価値創出を担っている。
人の感情を動かす体験は、有効なアクティベーションを実現できる機会
――橋本さんが牽引する体験デザイン本部の機能を教えてください。
橋本TOWには様々な営業プロデュース本部がありますが、体験デザイン本部はそれらと連携しながらも独立した展開を行っています。特徴的なのは、企画室とデジタル・アクティベーション室の各室に専門的な職能を持った人が集まり、案件ごとに適切なメンバーをアサインしながらクライアントのオーダーに応じていくところです。外部パートナーやグループ会社の協力を仰ぎながらディレクションを進めていくケースも非常に多いですね。私はこの体験デザイン本部で、体験CDを務めています。
体験デザイン本部 体験CD 橋本弘平
――その柔軟で多岐にわたる業務展開を象徴するような事例はありますか?
橋本5年ぶりに有観客開催となった『ポケモンジャパンチャンピオンシップス2024』では、会場の熱量を可視化できる空間と進行演出の企画から施工までと、AIシステムを使った「Pokémon Battle Scope(ポケモンバトルスコープ)」による観戦体験の初導入。大会のYouTube配信などを担当しました。この案件は体験デザイン本部の機能をフル活用した事例と言えます。
――橋本さんは、本部名にも掲げられている体験デザインをどう捉えていますか?
橋本僕が大事にしているのは、「体験」を起点にクライアントの課題解決を考えることです。ここでいう体験デザインは、イベントや施策そのものを指すのではなく、生活者の感情や行動の変化を見据えながら、人の行動プロセス全体を設計する考え方だと思っています。課題解決に直結する設計そのものです。改めて自分なりに体験デザインを定義すると、人の行動プロセスを設計すること、でしょうか。
――やはり体験はアクティベーションとして有効ですか?
橋本広告に対する回避傾向が強まる中、一方的なメッセージがますます利かなくなっています。それでも生活者に好意をもってもらうため様々なプロモーションが行われるわけですが、イベントは自ら行きたいと思って足を運ぶ前向きな気持ちが前提にあるから、人に感動をシェアする場合も濃度や熱量が自然と上がります。それゆえ体験は、生活者の行動変容につながる有効な手法としてますます価値が高まっていきます。私たちには、体験領域を軸に様々な挑戦を行ってきた経験で培った、体験者の感情を細かく設計できる力があるので、体験の価値をさらに引き上げることができます。
ポケモンジャパンチャンピオンシップス2024。ポケモンのゲーム部門・カードゲーム部門・『ポケモン GO』部門・『ポケモンユナイト』部門の4部門の日本一を決める大会。「日本一」の称号と世界大会への切符をつかむための熱い戦いが繰り広げられた。
生活者の心理と行動を考え抜いて得た知見で、リアルな場で人を動かせるパートナーになる
――エクスペリエンス・パートナー。これはどのような言葉なのか説明していただけますか?
橋本プロモーション領域とリアルエンタメ領域を横断しながら、生活者に感動と共感を届ける体験価値を創造し、クライアントのブランド価値と事業成長に貢献するのがエクスペリエンス・パートナー、TOWがそうした存在になるために進化していくという意志を示した言葉でもありますが、これも遡ればクライアントの課題解決に紐づいています。
――同じ目線に立つ関係性を深めるということでしょうか?
橋本言われたものをそのままつくるのではなく、プロモーション対象の良さや認知を広げるにはどういう体験が適切か、クライアントといっしょにつくり上げていくということですね。イベントプロモーションの企画制作を担ってきた私たちの武器は、どんなイベントにどういう人が来るかを現場感覚で知っていること。これは、生活者の心理と行動を考え抜いて得た大切な知見です。それを生かして、リアルな場で人を動かせるパートナーになる。エクスペリエンス・パートナーは新しい言葉かもしれませんが、体験そのものと同様に価値が上がっていくと思います。
――橋本さんの話を聞いていると、クライアントの課題解決という本質から目を逸らさない確固たる姿勢がうかがえます。
橋本どんなプロモーションであれ、イベント・クリエイターではなく、アクティベーション・プランナーである私にとっては、人に買ってもらえるという、実のある成果がいちばん大事なんですよね。
――その設計に橋本さんなりの方法論はありますか?
橋本それもすごく実践的です。いい企画を思いついたら、その足でスーパーマーケットに行き、課題の商品が置かれる棚を眺めながら、どうすれば毎日買い物をする人がキャンペーンに乗ってくれるか考えたり。SNS関連であれば、グラフィックを実際の画面上に当てはめてシェアの可能性を探ったり、とか。もちろんTOWの経験値で推測できる範囲はありますが、人の興味は移っていきますから、いずれにしても現在のリアリティを持って考えるようにしています。
モノを売るためにもっとも大事なのは人を動かすこと
――TOWがエクスペリエンス・パートナーに進化するため不可欠なのが体験デザインの拡張だとして、今後どのようにリアルエンタメ領域へ広がっていきますか?
橋本かつて広告とエンタメは、役割や目的が明確に分かれていましたが、今は垣根がなくなりつつあります。企業イベントにおいても公共性を備えたフェスのような形が実践されるようになっていますし、さらにプロモーションとエンタメの融合が進んでいくと思います。
――具体的にはどんな形ですか?
橋本たとえば、酒類メーカーがウィスキー体験を企画するならハイボールフェスを開催するとか。あるいは、ハイボールに合う揚げ物イベントでウィスキーの認知度を上げるとか。そうした企画で重要なのは、企業が伝えたいメッセージを「広告じゃん」で終わらせない、皆がしてみたいと思える体験に変換させる翻訳作業です。私たちはそれが得意なので、様々な協業グループとともに領域横断の事例と知見を増やしながら、体験を通じてクライアントの成果最大化を追求していきます。
――TOWにおいては、やはり体験ないしはイベントがもっとも優れたツールということでしょうか?
橋本プロモーション領域もリアルエンタメ領域も、そして両者の融合も重要。なおかつクライアントの課題解決ができるなら、必ずしもイベントにこだわりません。しかし、どんな場合でもモノを売るためにもっとも大事なのは人を動かすこと。ですがこの世の中、売れ方はいろいろです。営業担当者がスーパーに粘り強く通い、自社製品の棚を確保していくような、コミュニケーションでは通じない棚の力学もある。
それらを承知した上で、マーケティング学部出身で販促を経験してきた私としては、どうすれば売れるかに常に向き合いたいし、モノが売れた実績にフォーカスしたいです。ただし、人が動くことで起きる体験の価値は不変ですから、人の行動プロセスの設計においてイベントは欠かせません。
※2026年7月時点の情報です。
Photo:後藤 薫
Interview&Text:田村 十七男